ども。理学療法士目指して学校へ通っています、あずき (@azucky824 )です。
つい先日、不覚にも階段を踏み外し、足を捻って捻挫をしまいました。小学生ぶりにがっつりやってしまったのと、直後の痛みはかなり強く、「あれ、これ実習までに治らないんじゃないか!?」と一瞬肝を冷やしましたが、痛みが引いて気持ちに余裕ができると、「せっかくなら自分で治してみるか!」という気持ちが湧いてきたので、記事にしてみます。
僕は学生で知識もまだまだですが、理学療法ってこういう風に考えてるんだよっていうことが少しでも伝わればいいなと思いますので、よろしくおねがいします。
問診
今回は自分自身でやっていますが、病院ではドクターや理学療法士がお話を伺っていきます。ここでの情報と、レントゲンやMRIなどの画像所見に加え、触診などの検査で治療が必要な部位を見つけていきます。
受傷時の様子
駅の階段を一段とばしで下っているときに、下についた足が内反(足の裏が内側向くこと)し、そのまま体重をかけてしまった。痛みでしばらく動けなかった。
今,何をしたときに痛いか
痛みの検査は学生にとってもすごく重要で、この痛みの起こるタイミングや質・強さでかなり痛みの部位の候補が絞れます。
痛みの強さについては、他の場所は場面との比較も大事なのである程度数値化して記録します。色々な評価基準がありますが、今回はシンプルで学生でもよく使うNRS(Numerical Rating Scale)というものを使います。痛みを0−10までの11段階で表して、0に近いほど痛くない、10は死ぬほど痛いって感じの指標です。
今回痛みのあった部位と強さはこんな感じです。
- 歩くとき,蹴り出しで痛い(NRS:4)
- 足を下に向けると痛い(NRS:2)
- 押されると痛い(NRS:4)
あとは足を着地する時、体重をかけて立つときの痛みはありませんでした。
問診まとめ
受傷時の様子からすると、足関節の内反捻挫だと考えられます。
この時点で考えられる損傷部位としては、靭帯と骨・筋ですが、痛みなく着地・荷重できるので、骨の問題ではないと考えています。
また、空中で足を下に向ける時、自分で動かしても(自動運動)、他人に動かしてもらって(他動運動)でも、両方に痛みがあることから、筋肉による収縮・伸張での痛みというよりは、やはり靭帯の痛みの可能性が有力だろうと考えました。
ここでの問題は、「どの靭帯が」「どの程度」損傷しているか、また、合わせて他の組織も損傷していないかということです。なので、痛みについてもっと詳しく調べる必要があるため追加でいくつか検査をしてみましょう。
理学療法的検査
触診・疼痛検査
炎症所見
まず重要なのは、炎症があるかどうか。です。
なにか組織が損傷していると炎症反応が起きて、痛みを引き起こします。この炎症反応には「5つの徴候」というものがあるのでそれらを見ていきます。
受賞直後の写真はとっていないので、そのときの所見で書いています。
【発赤】
うっすらと赤みがかかっています。
【熱感】
触ってみると、わずかですが他の部位と比べて温かい感じがありました。
【腫張】
現時点で腫れている感じはありませんが、受傷後すぐ腫れてくるわけではないので油断できません。
【疼痛】
問診より、疼痛ありです
【機能障害】
今のところ痛みにより、動かしにくさはあります。
以上の点から、炎症反応は微弱ながらも始まっていると考えました。炎症があるということはなんらかの組織は損傷していると考えてよさそうです。
△受傷後24時間後でこんなかんじです。テーピング巻いてありますが大分足首から下の色が変わっているのがわかるかと。結構パンパンになってます。
どの部位に圧痛があるか
ここからは疼痛の部位を精査します。
指で押して痛みのある部位は以下の通り
- 立方骨周辺 (写真右の四角)
- 小指の付け根外側 (写真左)
押してみると、立方骨という骨の付近に少し強い痛みがありました。それと小指側にも。
受傷した時に階段でゴリッと打ち付けた記憶があるので、小指側はそれが主な原因かと。立方骨側については、今回の損傷部位ではないか?と推測しています。
徒手で動かしてみて疼痛が誘発されるか
まず受傷時の様子・圧痛部位から損傷部位が靭帯だとすると、よく捻挫で損傷する靭帯ではなく、足首の少し下にある「二分靭帯」の損傷を疑いました。
そこで、圧痛が出にくいようにしながら、付着部である踵骨・立方骨・舟状骨という骨を動かしてみます。
- まずは直接靭帯を触診→疼痛あり
- 踵骨・立方骨を牽引しながら上下に動かす→疼痛あり
- 舟状骨・立方骨を上下に動かす→疼痛あり
可動域検査・徒手筋力検査
若干疼痛・つまり感はあるものの数字としては左右差なし(このへんは炎症徴候によるものと推測しました。)
検査結果からの考察
ここまで精査してみて、どうやら足関節の下の方、「二分靭帯」という部分を損傷しているみたいだぞ、というのがわかりました。
そして損傷の程度については、疼痛があまり強くないこと、可動域には問題なかったことから、軽度の損傷と推測しました。(今後腫れ・痛みが強くなってきたらレントゲン・MRIも検討します)
二分靭帯について調べてみる
さて、これまでの段階で損傷部位と推測した「二分靭帯」について、どういうものなのか、そこを損傷するってどういうことなのかを調べてみます。
すでに検査の項目で前述していますが、上図のように、踵骨・立方骨・舟状骨にまたがってついています。
これがどういう時に損傷するか、というと古藤整形外科さんのHP(色んな疾患・障害が詳しくまとめてくれています)によると、
爪先立ちのような姿勢で体重が乗り、内側に足をひねった場合などにこの怪我は起こります。時には、たかが捻挫と思っていたら、二分靭帯が付着部分の骨ごとはがれてしまうこともあります。
・・・とあります。
今回の受傷時の関節の状態としては、階段を下るために「足先が下に向いた状態」で「内側にひねり」、そのまま体重を載せてしまった状況でした。まさに上記引用部のケガの起き方と同じ状況ですね。
治療しよう
MRIをとっていないので確実なことはいえませんが、受傷時の状況と今の状態から、僕の足のケガは「足関節捻挫(二分靭帯損傷)」とするのが有力です。そこで、最後に治療をしていきたいと思います。
治療の目的
まずはどんな目的で治療をしていくのか、というところを考えます。
ここでまず、治癒にかかる期間を頭に入れた状態ですすめていきましょう。
受傷してからはじめの頃は「急性期」と呼ばれ、炎症症状が強い期間です。ここでは基本的に患部は動かさずに行います。
次に「回復期」は急性期が終わってから、靭帯組織が治癒するまでの期間、つまり軽度損傷の場合は一般的に7〜14日間とされているので、約二週間は「なぜ捻挫してしまったのか」「受傷によって能力の低下がないか」について評価し、改善していく期間とします。
それぞれの期間の目的をまとめると以下のようになります。
急性期(受傷後3日間)
- 炎症を早く沈静化する
- 他の部位に影響が出ないようにする
回復期
- 再受傷予防(捻挫しやすい動き・状態を改善)
- 低下した能力の再獲得(関節の可動域・筋力・おかしな歩き方をしていないか等)→これは基本的に反対側の足の動きと比べて考えます。
急性期の治療プログラム
回復期の治療については、もうすこし動かせるようになってから動きも見ながら決めていくので、今回は急性の治療のみです。
RICE処置
ケガの応急処置として有名なものに「RICE処置」というものがあります。当ブログでも何度か登場していますが、以下のようなものです。
- Rest(休息)
- Icing(アイシング)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
つまり、すっごく簡単にいうと怪我してすぐはとにかく「動かさず」「圧迫しながら」「冷やして」「持ち上げる」というものが重要とされています。これは、炎症を早く押さえるためのものです。
捻挫の急性期については、RICE処置の中でも「しっかり冷やす」というのが重要です。
アイシングで気をつけるのは、きちんと足の形状に沿えるようなもので冷やすということ。なので家に保冷剤よりは、細かい氷を入れた袋を包帯でちょっと圧迫しながらやってもらうのが理想的です。
テーピング
捻挫のテーピング固定としては、ホワイトテープをつかってガチガチに固めるものも多く用いられます。(スラムダンクのゴリが「ガチガチに固めてくれ!」ってやってる奴です。)
しかしながら今回は、可動性の大きい足首の関節ではなく、その下の細かい骨同士の靭帯であること、それと疼痛自体も少ないので、軽度な損傷と推測でき、ガチガチにする必要はないんじゃないかと考え、ピンポイントで止めることにしました。(まぁ仕事でもかがんだりすることが多かったので、可動性は保ちたかったのもあります。)
そこで、日常生活において「何をしたときに痛いのか」という所に着目すると、歩行中の足の蹴り出しで痛みが出ることから、二分靭帯の付着部である立方骨が下に引っ張られることで誘発されると考えて、テーピングを2本、立方骨の下方から足関節をまたいでクロスさせて上に止める方法を用いました。
実際につけてから動作してみると、疼痛がかなり軽減しました。
NRSでいうと4→2くらい。疼痛が強いと、足を引きずって歩いてしまうので、このくらいの痛みであれば普段どおりに近い歩きが出来ます。
これ最初はちゃんとした理学療法士さんにやってもらったんですが、自分でつけ直した写真なので、大分付け方が下手ですね。このへんはもっと練習しなきゃいけません。
まとめ
急性期は基本的には動かせないので、出来ることはあまりありません。
ですが、ここでしっかり冷やさないと、損傷した組織が「瘢痕」といって、皮膚でいうとかさぶたみたいに、固くなってしまいます。また固定をしていかないと、健康なときの歩き方や動かし方がどんどん崩れてきてしまうので、戻すのに苦労してしまいます。
たった三日間ですが、リハビリとしては非常に重要な期間です。油断せずにいきましょう。
次回は数日後、動きを分析して回復期の治療を考えます。せっかくなので、治療の経過を随時書いていきたいと思います。質問・ご意見などあればTwitterかコメント欄でご連絡ください。