温熱療法の概要
温熱療法は身体の表面・深部の生体組織を上げることによって、全身や局所に生理学的な効果をもたらす治療法です。
その効果としては鎮痛・血流増大・筋の粘弾性の低下による伸張性の増大などがあります。
温熱治療では、皮膚温を38〜42度になるよう設定していきます。これは皮膚の温度を感じる神経は30〜50度で反応し、45度以上になると痛みを感じること、そして交感神経に効果的に作用する温度が38〜42度であることが根拠となっています。
分類
分類の仕方は熱伝達の仕方による分類がなされています。
熱伝達分類
熱を伝達する方法には①伝導 ②対流 ③放射 の3つがあります。温熱療法はこれらの熱伝達を利用して行っていくわけです。
「伝導」とは物体内に温度が存在すれば生じる現象で、熱伝導による熱輸送量が温度分布の温度勾配に比例します。これをフーリエの法則とも呼ぶわけですが、まぁつまり温度が他の物質に伝わる現象と言えば幾分かわかりやすいでしょうか。物質にはそれぞれ、「伝導率」という、温度の伝わりやすさを表す係数があり、これによって火傷しやすさを考えつつ治療をしていきます。この「伝導」は直接温かいものを皮膚に触れさせて行う治療の原理となっています。
次に「対流」ですが、これは主に液体の流れによって熱が輸送されるものをいいます。治療機器で言えば「渦流浴」あたりが該当します。
最後に「放射」は物体の表面から電磁波として放出されるエネルギーです。電子レンジなんかが身近な例かと思います。
それではここから、代表的な機器を交えてご紹介していきます。
ホットパック治療
医療施設で温熱治療といえば、最もポピュラーな機器かもしれないのが「ホットパック」というもの。
食品の乾燥剤などに使われているシリカゲルが中身に入っています。ちょうど以下の画像のようなものですね。
(画像引用:やさしさで医療を科学する│ミナト医科学株式会社)
△サイズは患部によって変えますが、これをタオルで包んで当てていきます。画像のは最新のものなのでタオル一枚で良さそうですが、旧式のものはタオルを何枚も重ねて使います。というのも、以下のような機械(ハイドロコレータ)を使って温度を80度近くまで上げているからです。
(画像引用:やさしさで医療を科学する│ミナト医科学株式会社
適応・効果
- 体温の維持
- 循環の改善
- 疼痛の軽減
- (精神的・身体的な)緊張の緩和
- 軟部組織の伸展性の拡大
ホットパック自体の効果は特別何かの疾患特有に用いられるモノではなく、全般的な症状に効くということが重要でしょう。
禁忌
やっちゃいけないケースは以下のようなものがあげられます。
- 出血傾向のある場合(血友病など)
- 急性炎症
- 開放創
- 皮膚疾患・感染部位
- 腎臓・心臓疾患により強い浮腫や循環障害
- 血管障害による循環不全
- 低血圧(収縮期血圧が90以下)
- 悪性腫瘍
パラフィン治療
もうひとつ紹介するのは「パラフィン」という治療。あんまり馴染みのないものかもしれませんが、実習先では必ずといっていいほど使っている機器でした。
(画像引用:やさしさで医療を科学する│ミナト医科学株式会社
△このような機械にパラフィンという半液体を入れ、加熱します。
(画像引用:やさしさで医療を科学する│ミナト医科学株式会社
△次に患部をその液体の中に入れ、出すと写真のように冷えて乾いたパラフィンが固形となりコーティングされます。これを繰り返すことで何重にも患部がコーティングされ、患部が保温される、という流れになります。
実際見ると結構不思議な道具なので、動画で見たほうがイメージしやすいかもしれません。ちょうどいい感じの動画がYouTubeにあったので貼っておきます。
色々と使う方法があるようですが、動画はグローブ法というものを使っているようですね。正直教科書的には勉強しましたが、僕も実際にはグローブ法しか見たことはありません。
適応・効果
- 関節リウマチ
- 骨関節症
- 複合性局所疼痛症候群
- 手の手術後
パラフィンの長所として、骨が突出していたりデコボコしている患部でも密着するため、どこの患部でも均一に温熱を加える事ができます。まぁ掃除とか凄い面倒だという話はよく聞くのでそこが短所になっているようです。
禁忌
禁忌としては皮膚疾患と開放創が挙げられます。
まとめ
今回は温熱療法とはなにか?その種類と簡単な説明・紹介をさせて頂きました。
自宅でやるとなると「あずきのチカラ」が便利そうですよ。